生地が出来るまで

生地が出来るまで

ここでは、生地が出来上がるまでの代表的な工程について簡単に説明します。
普段何気なく着用している生地も、多くの人々の努力や先人達の様々な工夫によるものだということを少しでも感じて頂ければと思います。

主な工程

紡績 | 撚糸 | 染色 | 織り | 補修 | 整理

紡績(ぼうせき)

生地を作成するには紡績と呼ばれる工程から始まります。
紡績とは羊毛など短繊維を長い糸に加工する工程を指し、紡績によって作られた糸を紡績糸と呼びます。

原毛

集荷された原毛

最初に羊毛などの原毛は繊維をときほぐします。リサイクル繊維などはボタンなどの利用できない部分を取り外し、色や繊維質ごとに分別します。 紡績の素材は羊毛だけではなく、ポリエステル繊維、家庭で不要になったリサイクル繊維などを混合して使用します。
このように複数の種類の短繊維を混ぜ合わせて紡績することを混紡(こんぼう)と言います。

カーディング

繊維を平たく伸ばす(カーディング)

エアコンプレッサーによって混合された繊維は、振動を与えながらローラに繰り返し通し平たく引き伸ばされて繊維の方向が揃った繊維束になります。

紡績

カーディングされて引き伸ばされた原毛

紡績

紡績工場での撚糸風景

最後に平たく引き伸ばした繊維束を細く伸ばして軽く撚りをかけ、糸として使用できる強度を与えます。
この工程を撚糸(ねんし)と言いますが、一般的にはより高度な撚糸は撚り専門の撚糸工場で行います。

撚糸(ねんし)

紡績工程を経た糸の多くが撚糸専門の工程でさらに加撚されます。
加撚することにより、糸の強度や弾性が増し、糸の太さが均等になるなど糸の性能が向上します。
そのため、紡績工程で軽く撚られた糸を加工する工程を経ます。

加撚工程

さまざまな方法で糸を撚る

加撚工程での糸の撚り方には撚り方向によって左撚り(Z撚り)、右撚り(S撚り)の2種類あります。
また、撚り回数の多い少ないで、甘撚り、強撚りなど様々な撚り方があり、特殊なものでは、ストレッチ性の物質やフィラメントなどを巻き付けるものなどもあります。糸の風合いや生地の使用用途に応じて適切な組み合わせが選択されます。

染色(せんしょく)

色を着色し、糸に固着させる染色という工程に進みます。
染色品質を保つには、まず厳密な色の調合が必要です。
色の調合はデジタル管理されたシステムで厳密に行われます。
また、染色に使用する顔料の保存には日光・湿度などの管理を厳重に行う必要があります。

染色用の圧力窯

デジタル管理された調合システム

はじめに、撚糸工場から届いた糸を穴の開いたボビンに巻き直します。
穴の開いたボビンに巻くことにより、内側と外側でむらなく均等に染色することが可能になります。

染色用の圧力窯

染色前にボビンに巻く

ボビンに巻かれた糸は、圧力を加えた大きな窯に沈められ、数時間以上圧力をかけながら染色されます。
糸染めの代表的な技法としてチーズ染色、かせ染色などがあり、染色技法によっても糸の風合いが異なるため、出来上がりの風合いに応じた技法で染色されます。

染色用の圧力窯

大きな釜に複数の巻いた状態の糸が浸される

織り(おり)

染色された糸は縦糸と横糸で織りあげて一枚の生地にする織工程へ進みます。
織工場に届いた糸は、生地を織れるように縦糸と横糸に分けられます。
縦糸を枠に付けて、整経機という機械で巻いていきます。
その後、綜絖や筬に糸を通して準備します。
経糸の本数にもよりますが、準備だけでも大体3~4日掛かります。

基本メカニズムは同じでも生地の仕上がりや用途によって様々な織機(しょっき)があり、代表的なものにはションヘル機とレピア機があります。

ションヘル織機は、木製のシャトルと呼ばれる道具を使い糸を横に飛ばして低速で生地を織り上げる機械です。
生地を低速で織り上げるので、生地本来のやさしい風合いが出ます。また、一度に織り上げる量が多くないという点を生かして、生地のプロトタイプ生産など、少量ロットの作成にも使用されます。
ただし、工程には熟練した職人技が必要とされることもあり、減少の一途を辿っています。

手織りに近い仕上がりのションヘル織機

手織りに近い仕上がりのションヘル織機

レピア織機はレピア(槍状の金具)の先端で糸をつかんで高速で生地を織り上げる機械です。
生地を高速で織り上げるので、短納期で生地を織る事ができ、多生産に向いている機械です。
ションヘル織機よりも高速に織り上げるため、生地はより引き締まったものとなります。

高速に織れるレピア織機

高速に織れるレピア織機

ションヘル機械は横糸の打ち込み本数にもよりますが、50m織るのに平均3日程掛かります。
一方レピア機械では同じ50m織るのに平均1〜2日程度で織れます。
このように処理速度が異なるので、織る生地の量やサイズに応じて使い分けます。

補修(ほしゅう)

補修とは織工場から届いた生地を補修する専門の工程のことです。
補修では、糸の結び目や糸が切れた所などを補修し生地をきれいに仕上げていきます。
作業は全て手作業で、織り上がった生地のほつれや糸切れがないかを生地の折り目一行一列をルーペなどを使用して人の目で念入りに確認します。
そのため、組織の難しいものや糸の細いものなどは確認にも補修にも多大な根気と時間を要します。

生地の補修現場

生地の補修現場

補修工場では加工前の生地の補修の他にも、すでに製品になって店頭に並んでいたものなども修正します。
色むらの補修や風合いの補修などは特に高度な技術を要するため、高度な補修技術を頼って国内だけではなく、国外からも多数の補修依頼が寄せられています。

生地の補修

一度店頭に並んだ商品の補修を行うことも

生地補修後は整理工場に配達し、そこで仕上がってきた生地を再度確認します。そして問題がなければ再び整理工場に戻します。
このように、加工の最終段階では念入りに生地を確認、補修を繰り返し、商品としての品質を上げていきます。

整理(せいり)

整理工場では補修が終わった生地を仕上げていきます。 出来上がりの生地の風合いや特徴を実現できるよう、工程順を決定し出来上がりに応じた処理を施します。

整理工場作業風景

整理工場での作業風景

代表的な工程は、生地の毛羽立ちを焼きとる毛焼き、生地の洗浄、フェルトのような生地を作成するプレス加工などです。
通常これら以外にも生地の出来上がりに応じた様々な工程がありますが、各工程は工場ごとの企業秘密となっている場合が多いため、ここでの説明は割愛します。

整理工場作業風景

生地に合わせて様々な処理が行われる

仕上がってきた生地は、テキスタイル会社に連絡し、仕上がり具合を確認してもらいます。仕上がり状態に応じて、再度補修工場に出すなど、その後の工程を決めます。
出来上がりに問題がなければ、再度生地を検査して棒に巻き倉庫に保管し、出荷を待ちます。
依頼によっては整理工場から即座に出荷する場合もあります。


TOP